ライブを見ていて、「今の歌って生歌?」「もしかして口パク?」と思ったことはありませんか。
特にダンスをしながら歌うアイドルのライブでは、完全な生歌だけでなく、事前に収録した歌声を流す口パクや、生歌と音源を重ねる被せが使われることがあります。実際には「全部口パク」か「全部生歌」かの二択ではなく、曲やパートによって歌唱方法を変えているケースもあります。
また、現地では生歌だったように聞こえたのに、後日発売されたライブDVD・Blu-rayでは驚くほどきれいに聞こえることも。ライブ映像では音声が調整・修正されることもあるため、「映像が上手だから当日もまったく同じだった」とは限りません。
本記事では、オタ歴30年の筆者が、ライブで口パクを見分けるポイントや被せとの違い、なぜ口パクが使われるのかについて解説します。
ライブの口パクを見分けるポイントは?
ライブが口パクかどうかを100%見分けるのは、観客側からは難しいものです。
音響や会場の反響によって聞こえ方も変わりますし、後述する「被せ」の場合は音源と本人の生歌が同時に聞こえています。
そのため、一つのポイントだけで「これは絶対に口パク」と決めつけるのではなく、歌声や口の動き、パフォーマンス全体を見ながら判断してみましょう。
口と歌声のタイミングが合っているかを見る
分かりやすいポイントのひとつが、本人の口の動きと聞こえてくる歌声です。
マイクから口を離した瞬間にも同じ音量で歌が続いていたり、明らかに口を閉じているのに歌声が聞こえていたりすれば、音源が流れている可能性があります。
ただし、これだけで口パクとは断定できません。バックコーラスやほかのメンバーの歌声、被せ用の音源などが流れている場合もあるためです。
それからドームなど広い会場では、バクステ側の席や2階席に入るとモニターの映像から遅れて声が聴こえてくるので、これは口パク判定の材料にはなりません。
激しく動いても歌声がまったく変化しない
激しいダンスを踊っているのに、CD音源のように声量や息遣いがまったく変わらない場合も、口パクや被せを疑うポイントにはなります。
生歌なら、走ったり踊ったりしたことで多少息が入ったり、マイクとの距離によって声量が変わったりすることがあります。
もちろん、ダンスをしながら安定して歌える人もいます。「上手すぎる=口パク」という判断はできませんが、音源とほとんど同じ歌声が常に続いているなら、音源を併用している可能性は考えられます。
CD音源とまったく同じ歌い方か確認する
普段から楽曲を何度も聴いているファンなら、CDとの違いから気付くこともあります。
生歌では、語尾を伸ばしたり、少しメロディーを変えたり、その日のテンションで歌い方を変えたりすることがあります。一方、細かな息遣いやクセまでCD音源とまったく同じなら、収録済みの歌声が使用されている可能性があります。
ただし、ライブ用にあらかじめ別のボーカル音源を収録している場合もあります。そのため、「CDと違うから生歌」とも限りません。
アドリブや煽りが入ると分かりやすいこともある
生歌かどうかが分かりやすくなるのが、メンバーがアドリブを入れたときです。
歌詞の一部を変えたり、曲中に客席を煽ったり、いつもと違うフェイクを入れたりすると、少なくともその部分は本人のマイクから声が出ていることが分かります。
ただし、ここでも「アドリブ部分が生歌=曲全体が完全な生歌」とは限りません。通常の歌唱部分には被せを使い、煽りやアドリブは生声という構成もできます。
歌詞を間違えたときに分かることも
ライブならではのハプニングで、歌詞を間違えたり歌い出しが遅れたりすることがあります。間違えた本人の声がそのまま聞こえれば、生歌であることが分かりやすい瞬間です。
反対に、本人が明らかに歌えていないのに正しい歌詞が流れ続けている場合は、バックトラックにボーカルが入っている可能性があります。
口閉じてるのに歌声が聞こえることもあります。
ライブは完全な口パクより「被せ」の場合も多い
「口パクだと思っていたけど、よく聞いたら本人の声も聞こえる」という場合は、被せかもしれません。
特に歌いながら激しいダンスをするアイドルの場合、完全な生歌か完全な口パクかではなく、音源と生歌を組み合わせる方法が使われることがあります。
被せとは音源と生歌を重ねる方法
被せとは、あらかじめ用意したボーカル入りの音源を流しながら、本人も実際にマイクで歌う方法です。
本人がしっかり歌えば生声が前に聞こえ、声量が小さくなった部分ではバックの歌声が補ってくれます。
そのため、激しいダンスを踊りながらでも楽曲としての歌声が途切れにくく、ライブ全体のクオリティを安定させやすくなります。
パートによって生歌と音源を使い分けることもある
1曲の最初から最後まで同じ方法で歌うとは限りません。
例えば、Aメロやバラード部分は生歌を強く聞かせ、激しいダンスが続くサビでは被せを強めるなど、パートによってバランスを変えることも考えられます。
さらに、同じグループでもメンバーごとに歌唱方法が異なる場合があります。そのため「このグループは生歌」「このグループは口パク」と一括りにするのは難しいところです。
被せだと生歌が二重に聞こえることがある
被せを見分けるときに分かりやすいのが、声が少し二重に聞こえる瞬間です。
本人のタイミングや音程がバックのボーカルとわずかにずれると、「同じ人の声が2つ聞こえる」ような状態になることがあります。
オタ歴が長くなってライブへ何度も行っていると、「今日は生歌がかなり大きいな」「今日は被せ強めだな」となんとなく分かることも。ただし、会場の音響によっても聞こえ方は変わるため、これも絶対的な判別方法ではありません。
アイドルがライブで口パクや被せを使うのはなぜ?
口パクという言葉にはネガティブな印象を持つ人もいますが、ライブで音源を使用することにはさまざまな理由があります。
特にアイドルライブは「歌を聴かせる」だけでなく、ダンスや演出を含めた総合的なエンターテインメントです。
激しいダンスをしながら歌うのが難しいため
大きな理由のひとつがダンスです。
数分間激しく踊るだけでも息が上がるのに、それを2時間前後のライブで何曲も続けながら、安定した声量と音程で歌い続けるのは簡単ではありません。
特にダンスを魅せたい楽曲では、歌唱をある程度音源で補うことでパフォーマンス全体の完成度を保つことができます。
ライブの演出を成立させるため
アイドルライブでは、ステージ上を走ったり、リフターやフロートに乗ったり、複雑なフォーメーションで踊ったりと、歌唱以外にもさまざまな演出があります。
さらに衣装チェンジや移動などもあり、常にマイクへ一定の声量を入れられる状況とは限りません。
歌・ダンス・映像・照明などを組み合わせた一つのショーとして考えたとき、ボーカル音源を併用する方が演出を成立させやすい場面もあります。
喉への負担を抑えるため
ツアーでは、短期間に何公演もライブを行うことがあります。同じ日に昼・夜の2公演を行うケースもあります。
毎公演すべての楽曲を全力で歌い続ければ、当然ながら喉への負担も大きくなります。
長いツアーを最後まで安定して行うために、一部の楽曲や負担の大きいパートで音源を活用するという考え方もあります。
歌以外のパフォーマンスを優先する曲もある
バラードとダンスナンバーでは、ライブで求められるものも違います。
歌声をじっくり聴かせる楽曲では生歌を中心にし、激しく踊る楽曲では被せを強くするなど、曲ごとに優先する要素を変えることがあります。
オタ歴30年の筆者としても、「口パクか生歌か」だけでライブの良し悪しを判断する必要はないと思っています。歌を聴かせる曲では生歌、踊って魅せる曲では被せなど、その曲に合った見せ方ができていれば十分楽しめるのではないでしょうか。
ライブDVDの歌声は実際のライブと違うことがある?
ライブDVDやBlu-rayを見て、「現地ではもっと声が裏返っていた気がする」「歌詞を間違えていたはずなのに直っている?」と感じることがあります。
これは、ライブ映像作品では映像だけでなく音声にも編集や調整が行われることがあるためです。
ライブDVDでは歌声が調整されることがある
商品として発売されるライブDVD・Blu-rayでは、収録した音声をそのまま無加工で収録しているとは限りません。
ライブ会場では歓声、楽器、マイク、会場の反響などさまざまな音が同時に発生しています。それらを作品として聴きやすい状態にするため、ミックスや音量調整などが行われます。
その過程でボーカルについても、作品として自然に聞こえるよう処理されることがあります。
音程や歌声が修正される場合もある
ライブ映像では、ボーカルの音程やタイミングなどが補正されることもあります。
そのため、現地で聞いたときには少し音程が外れていた部分が、映像作品ではきれいに聞こえることもあります。
「DVDで完璧に歌えているから、この公演は完全な生歌でこのクオリティだった」と映像だけから判断するのは難しいということです。
歌詞間違いなどが修正されることもある
ライブ当日に歌詞を間違えたのに、映像作品では正しい歌詞になっていることもあります。
音声の差し替えや別公演の素材など、編集方法はいくつか考えられますが、実際にどのような処理が行われたかは制作側から明かされない限り分かりません。
逆に、メンバー同士が笑ってしまった場面や特徴的な歌詞間違いなど、ライブならではの出来事をあえてそのまま残す作品もあります。
現地でしか分からない生歌感もライブの魅力
映像作品は何度も見返せるようきれいに仕上げられている一方で、現地には現地でしか味わえない歌声があります。
息遣いが聞こえたり、少し音程を外したり、いつもより声が伸びたり、その日だけのアレンジが入ったり。完璧ではない部分まで含めて、「今日、本当にここで歌っている」と感じられる瞬間があります。
オタ歴30年でライブへ通っていると、むしろちょっとした歌詞間違いや声の揺れで「今日めちゃくちゃ生歌だ!」とうれしくなることもあります。 DVDの整った歌声とはまた違う、現地ならではの楽しさです。
口パクでもライブを楽しめればOK?
ライブへ何を求めるかは人によって違うため、「口パクは絶対に嫌」という人がいるのも当然です。
歌唱力を楽しみにライブへ行っているなら、できるだけ生歌を聴きたいと思うでしょう。一方で、アイドルのライブではダンス、衣装、ステージ演出、ファンサ、映像なども含めて楽しみにしている人もいます。
「口パクか生歌か」の二択で考えなくてもいい
実際のライブでは、生歌・被せ・収録音源が複雑に使い分けられていることがあります。
「今日は被せが強かったけど、バラードはしっかり生歌だった」「ダンス曲では音源が目立ったけど、MCからそのまま入った曲では生声がよく聞こえた」など、一公演の中でも印象が変わることがあります。
そのため、一部分だけを見て公演全体を「口パクライブだった」と判断する必要はないでしょう。
生歌ならではのハプニングを楽しむのもライブの醍醐味
生歌では、CDとまったく同じにならないからこその面白さがあります。
いつもと違うフェイクを入れたり、メンバー同士でふざけて歌えなくなったり、歌詞を間違えて本人が笑ってしまったり。こうした瞬間は、その日の公演に参加した人だけが見られるものです。
長くライブへ通っていると、「完璧に歌えたか」以上に、こうしたその日限りの出来事が思い出に残ることもあります。
歌・ダンス・演出を含めて自分なりに楽しもう
口パクや被せをどう感じるかに正解はありません。
生歌を重視する人もいれば、「あれだけ踊ってくれるなら被せでも全然OK」と思う人もいます。逆にバラードだけは生歌で聴きたいという人もいるでしょう。
個人的には、ライブへ行ったからこそ見られる表情やダンス、アドリブ、生歌の瞬間など、その公演でしか起こらないものを探すのもライブの楽しみ方のひとつだと思います。
ステージに立っている、それだけでありがたい
そして長年オタクをやっていると、最終的にたどり着く境地があります。
「いや、もう自担が今日も元気にステージに立っている。それだけでありがたい」
口パクなのか、生歌なのか、被せなのか。もちろん気になる瞬間はあります。なんてたって1秒でも長く生歌を聴きたい。でも、チケットを当てて、予定を空けて、会場までやってきて、暗転して光が差した瞬間に自担がそこにいる。もうその時点で「本日もステージに立ってくださりありがとうございます、人生最高得点!」の気持ちです。
しかも歌って踊って、衣装を着替えて、笑顔を振りまいて、こちらに手まで振ってくれる。冷静に考えたら十分すぎます。自担がステージ上で楽しそうにしているなら、本日のオタクの任務はほぼ完了です。
オタ歴30年にもなると、生歌でめちゃくちゃ上手かった日は「今日すごい!」と喜び、被せが強めの日は「今日はダンスを存分に見させていただきます」と切り替え、もはや何があっても楽しむ方向へ進化します。
今日も自担が元気にステージへ立っていることは決して当たり前ではありません。今日も自担がそこにいる。ありがとう。ステージに立ってくれてありがとう。チケットを当ててくれた神様もありがとう。くらいの気持ちで拝んでおくのも、長くオタクを楽しむコツなのかもしれません。
まとめ|ライブは口パクではなく被せを使っていることもある
ライブで口パクかどうかを見分けたい場合は、口と歌声のタイミング、マイクとの距離、CD音源との違い、アドリブや歌詞間違いなどが判断材料になります。ただし、観客側から100%断定するのは難しいでしょう。
特にアイドルライブでは、完全な口パクではなく、事前に収録したボーカルと本人の生歌を重ねる「被せ」が使われることもあります。曲やパートによって生歌とのバランスが変わることもあるため、「生歌か口パクか」の二択とは限りません。
また、ライブDVDやBlu-rayは商品として仕上げる過程で音声の調整や編集が行われることがあり、現地で聞いた歌声とまったく同じとは限りません。
生歌の息遣いやちょっとしたミス、被せを使った激しいダンスなど、それぞれに違った魅力があります。「今日はどんな歌い方かな?」と注目してみると、いつものライブにも新しい楽しみ方が増えるかもしれません。


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